食文化 お菓子

鏡のように艶めいて
ザッハトルテ Sachertorte

ウィーンの代名詞ともいえるお菓子、ザッハトルテ。その発祥は意外にも、若い見習い職人の機転によるものでした。19世紀、ハプスブルク帝国の宰相メッテルニヒが晩餐会を開いた際、「皆をあっと驚かせるとびきりのデザートを作ってほしい」という突然のリクエストを受け、見習い職人がありあわせの材料で作ったのがザッハトルテ。彼はやがて独立し、自らの名前を冠したホテル「ホテルザッハー」を創立。ザッハトルテはホテルの顔として、現在まで多くの来賓をもてなしています。

ザッハトルテの決め手となるのは、鏡のように艶やかな表面。煮詰めた砂糖を加えたチョコレートを、一気に流してコーティングします。チョコレートを砂糖の結晶で固めているため、よくみると、ダイヤモンドダストのような光の粒が煌めいているのがわかります。
コーティングの中には、チョコレートをたっぷり使った生地と甘酸っぱいアプリコットジャム。そして最後に、ホイップした生クリームを添えて召し上がれ! チョコレート、アプリコット、生クリームの3つが揃って初めて、ザッハトルテの完成です。
チョコレートにさらに砂糖を加えているので甘さが強いのは当然ですが、でも決して「甘すぎる」ということはありません。アプリコットの酸味が甘みを和らげ、生クリームがカカオの薫りを引き立てる。チョコレート、アプリコット、生クリームが三位一体となって奏でる甘美なワルツ、それがザッハトルテです。